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【緊急インタビュー】『24時間ではしりぬける物理』小林 晋平准教授

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今回、24時間連続講義というある意味とんでもない企画に挑戦されるとは思うんですけど、そもそもこの企画をやろうと思った経緯とはなんでしょうか?


一つはやっぱり夜学が延期になったっていうのがありますね。
夜学は、物理を体感するとか、音楽と組み合わせて全然違うエンターテイメントとして物理を味わうイベントです。そこでは難しいものは難しいまま面白がったっていいじゃないかと。

そもそも難しいからこそ面白いってあると思うんです。推理小説が難しい方が面白いのと同じです。その興奮が全然伝わらないまま誤解されてるのは勿体ないなってずっと思ってたんですね。だからああいうイベントやりたかったんだけど、コロナの騒ぎで一つできなくなってしまった。

それともう一つ、動画で配信することは以前から考えてはいたんですが、少しためらっていたんですよ。やっぱり生で面と向かってやるものに比べると、動画では熱が伝わらないんじゃないかなって思ったりして。

喋る方としても、見てくれている人たちの表情が分からないとやりにくいわけですよ。

みんなが難しいって感じてるなとか、つまんなそうにしてるなと思ったら話題変えたりとかが出来ないわけで、動画ってやりにくいなって思ってたんですけど、コロナのこういう事態になった以上、一回動画の配信を試して見るべきかなって思ったんですよね。

できるできないとか言ってないでまず一回実験してみようと。それで自分で一人でYouTube動画を配信してみようと思ったんですよ。

動画は動画でまた良さがあって、繰り返し観れるとか好きなとこだけ観れるとか、そういうのって逆にライブでは出来ないことなわけですよね。

ただ、動画は熱を伝えにくいっていうのをすごく感じたんですよ。それをなんとかしたいと思ったときに、動画そのものじゃなくてパッケージの部分でというか、外側の部分で何か面白いイベント、お祭りにしたらひょっとしたら変わるんじゃないかなと思って。

なんか自粛ムードでつまらない感じになってるじゃないですか。

そんな時こそお祭りみたいなことをやりたくて、なおかつクオリティの高いものを届けられないかと思ったときに、高校物理で一気に駆け抜けるってことをやったらイベントとしても面白いし、しかもこれが役に立つなって人も多いんじゃないかなって思ったんです。

普段講義をしている大学や大学院むけの内容だと、理系の大学生とか、物理が好きな人たちにしか伝わらないですけど、高校物理なら、宇宙とか相対理論だけには興味あるんだけど今まで物理は敬遠してた人たちにもメッセージ届けられるなって。

それに、どんなに忙しくても1日なら物理に時間をもらえるんじゃないかと。何日間も勉強するのは大変かもしれないけど、たった1日。まあ24時間ではあるんですけど(笑)

たった1日付き合ってくれたら面白い体験できるかもしれませんよっていうのは、皆さん面白がってもらえるかなって思って。当初「48時間でやろう」っていう話もありましたけど、そのパターンがなくなったのは単純に僕の体力の限界です(笑)

48時間にしとけば多分詳しくやれるとは思いますけど、それはさすがに無理なので(笑)

僕もしゃべりたいことは山ほどありますけど、むしろそれを24時間になんとか収めるってのが挑戦かなと思っています。


そうですね。
今回の企画もそうなんですが、『夜学』だったり『大人の科学バー』だったりさまざまな活動を小林先生は行っていますが、そういった活動はなぜ行っているのでしょうか?


そもそも自分が何を知りたいと思ってやっていたのかを見つけたかったって所が大きいんですよ。
一般の人に向けて講座をやるのが一番いいのか、研究だけをやってる方がいいのか正直分からなかったんですね。

なのでとにかく動いてみようと思って皆さんの所で喋りだしたってのが実際のところで、喋ってるうちにだんだん自分がやりたい事が少しずつ明確になっていっている感じです。

少し見えてきたのが、RIIFS構想(リーフスこうそう)って僕が名付けている、文化都市構想というか、学びで街を作る構想ですね。RIIFS は Research Institute for Integrated Fundamental Sciences(統合基礎科学研究所)の頭文字です。様々な分野の基礎科学を研究できるところを作る。学びの力で世界を変えていく。

最後はどうなったら嬉しいかというと、僕は世界の深層は様々なものを全て含めて綺麗だと確信しているんですが、世の中には不当な理由で、本人のせいじゃないのに「世界が綺麗だ」なんて言ってられない人たちって沢山いると思うんですよ。

生まれたときからその国で戦争してたとか、親から虐待を受けているとか、ものすごく貧困の中にいるとか、「世界が綺麗」なんて、それこそそれが「綺麗事」だと思っている人は山ほどいると思うんです。少しでもそういう不幸を減らしたいなと思っていて。

僕は、戦争の一つや紛争の一つを止められなかったら学問としては力がないんじゃないかと思うんですよ。

本当の学問って最終的にはそういうものを止めれるぐらいの力があって、戦争でもなんでも、『馬鹿なことやめようぜ』、『くだらないことやめようぜ』って言えるのが本当の学問の力じゃないかと思っているんですよ。そして学問にはそういう力があるということを僕自身も確かめたい。

学ぶ街を作りたいっていうのは、その学問の力によって、本当の人間が人間として幸せになるための真の価値観みたいなものを探っていこうよっていう、そういう事が出来る場所を作りたいからなんです。

面白いからとか、楽しいからやってるんですって堂々と言えるような、そういうものを社会に実現したいなって思っています。

今回United Codeの皆さんとも一緒にやらしてもらって非常に僕も志が近いなって思ってるとこがあるんですけど、音楽の力で世界の貧困とかを少しでも無くしていけたらって想いがありますよね?

そこが一緒なんだと思うんですよ。なんかそういう止むに止まれぬ思いというか、自分にも何か出来ないかなって思って、とにかくできるところからやってるってのが。


小林先生自身そういった構想だったり想いに行き着いたキッカケってあったんでしょうか?


僕は子供のころからなぜかそうなんですよ。ひょっとすると父親が与えてきたものがそういうものだったのかも知れないですけど、小学校3年生の時にクラス目標を皆で考えてて、僕が思いついたクラス目標が『人間らしく生きる力を持とう』だったんですよ。

子供って直感的に大人は汚いとかなんか思ってるところあるじゃないですか?多分なんかそんな思いがあったんでしょうけど、なんとなく「人間が人間らしく生きてないんじゃないか」と思ったんでしょうね。

でも多分、多かれ少なかれ子供って誰でもそういう思いを持っているんですけど、だんだんそういうことを忘れていっちゃうんですよね。ただ、たまたま僕はラッキーで周りに同じ事を考える人たちもいたので、そのまま考え続けることを許されたっていうか。

アインシュタインの言葉なんですけど『研究者の良い所は、子どもが子どものままでいさせてもらえるところである』って言葉があって。


子供が子供のまま・・・


最近は研究者をとりまく環境とかも変わってて、少しずつそういうのが許されなくなってきてるのは物凄く悲しい話ですけどね。
それって研究者じゃないよなって思いますけど。


なるほど、本来あるべき姿というかスタンスが変わっていくにつれ、研究や学問の魅力などが伝わりづらくなってしまっているのですね。


では最後に、開催にあたって小林先生の意気込みをお願いします。


このチャレンジが前代未聞なのは僕にとってもそうなわけで、正直怖さもかなりあります。体力的な怖さとか、皆さんに喜んでもらえるのかとか。
ただですね、物理に対する見方が恐らく変わるだろうと思いますし、これを期に日本とか世界の学び方が変わるんじゃないかなって予感もしているんです。

最後は盛り上がって、『あれってなんだったろうね?』『あの盛り上がりってなんだったろうね?』ってなれば一番いいなっていう感じですね。皆さんと一緒に謎の一体感というか、よく分からない高揚感を味わいたいですね。

翌朝目が覚めたらあれ何だったろう?っていうのでもいいから、「一回あれを体験したらもう戻れないな」みたいなのを味わえたら良いなって思いますね。


ぜひそんな体験を生み出せるよう僕たちも尽力させていただきます!
本日はお忙しい中お時間いただきありがとうございました!

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FooLiGANS 3rd.EP “NEW AGE” Digital Release

United Code

Member(L→R) Kad(Gt) Hiroki(Dr) RYOSK(Vo) $hin8o(Ba) Saku(Gt)

2022.12/21(Wed)FooLiGANSの4年ぶりとなる3rd. EP“NEW AGE” がDigital Releaseされる。
主にニューメタル、ハードコア、hiphopから影響を受けた楽曲が多く、圧巻なライブパフォーマンスに定評がある次世代のネオミクスチャーロックバンド。12月23日(金)には3rd. EP“NEW AGE”のRelease Partyが新宿アンチノックで行われる。彼らの新曲を掲げたライブ、もうすでに会場の熱気が伝わってくる程大いに盛り上がるであろう。そしてミクスチャーロックバンドには要注目バンドになっていくだろう。今後のFooLiGANSには目を離すことはできないはずだ。

 

2022.12/23(Fri)

@新宿ANTIKNOCK

FooLiGANS & ANTIKNOCK pre.

【FooL AROUND-FooLiGANS 3rd E.P “NEW AGE” release party-】

●ACT:FooLiGANS / MAKE MY DAY / SlyDoggy / HenLee / The Number Zero / WILDOGS

●OPEN17:30/START18:00

●ADV¥2,800+1D(¥600)/DOOR¥3,300+1D(¥600)

※前売各取置予約orプレイガイド[Livepocket]

https://t.livepocket.jp/e/fool_a

Twitter

https://mobile.twitter.com/fooligans_JPN

Instagram 

https://www.instagram.com/fooligans_official/

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80s,90sをイメージしたメロディのポップでエレクトロニックなコラボ Yun*chi+宝生久弥 / FEEL

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2022年10月19日デジタルリリース

11月にデビュー10周年を迎え全国ツアーも開催するYun*chiと 15周年イヤー中のレーベルScapeRec,Tokyoを主宰する宝生久弥のコラボ! CoサウンドデザインにインドネシアのHMGNCのグラハディアが参加 10/22@下北沢ERAでYun*chi with HOJO HISAYA BANDのライヴも決定
作品概要

デビュー10周年記念のベストアルバムのリリースやワンマンツアーも決定した、ポップスとアニソンからクリエティ ブ・シーンまでを繋ぐシンガーYun*chiと、タイ、インドネシアの電子音楽アーティストとのコラボレーションから有 名企業のテーマ曲、CM曲や展覧会BGMを担当する電子音楽家 宝生久弥によるポップでエレクトロニックなコラボレー ション曲がリリース!ジャケット・アートワークは昨年Yun*chiとライヴでコラボレーションをし、近年のスケープ レック作品、イベントのアートワーク、デザインを担当するリキッドライト・アーティストKuriko Tsuchiyaが担当。


収録楽曲

1. FEEL (4:39)



Yun*chi (ユンチ) プロフィール

2012年11月のメジャーデビューミニアルバム「Yun*chi」が「ミュージッ ク・ ジャケット大賞2013」にて「大賞」を受賞。オリエンタルなルックスを活か し、JulieWataiの作品集「はーどうぇあ・がーるず」に被写体として参加、「ち んかめ」「ヤングキング」などモデルとしても活動している。2013年、2014年 とロンドンで開催された「HYPER JAPAN」、アメリカ・テキサスにて開催され た世界最大のビジネスとコンテンツの祭典「SXSW2016」への出演を始め、ミャ ンマー、ジャカルタ、NY、マレーシア、台湾など、世界のステージを魅了。 TV アニメ「ログ・ホライズン」エンディング・テーマやTVアニメ「うーさーのそ の日暮らし 夢幻編」主題歌も担当。アーティスト名についている 記号 「Asterisk」は「小さな星」という意味を持つ。


宝生久弥 / Hisaya Hojo プロフィール

岩手県盛岡市出身 電子音楽家・作曲家でDJ。電子音楽レーベルScapeRec,Tokyo主 宰。 代表作品に三菱地所『大手町カフェ』、東京ミレナリオ 『Snow Mail』、100万人のキャンドルナイ『candlescape』、 愛・地球博2005『地球回廊』等、数々の企業、団体のテーマ音 楽、BGM、音楽プロデュースを担当。音楽を担当した大手町カ フェがグッドデザイン賞の金賞を受賞。SnowMailが文化庁メ ディア芸術祭にて審査委員会推薦作品に選定。LIVE、DJも行って おりキャンドルナイト・イベント『夏至フェス@代々木公園野 外音楽堂』など数々のイベントに出演。

2019年音楽プロダクションUnited Code Limitedと業務提携。2020年にリリースしたNostal -Asia (2020Remaster)がiTunes Store エレクトロニック トップアルバム7位にランクイン。2022年HOJO HISAYA BAND として初のツアーを開催。音楽活動、創作活動の一貫したテーマは「生命力」。

アーティスト: Yun*chi+宝生久弥 (ユンチプラスホウジョウヒサヤ)
タイトル: FEEL (フィール)
配信日: 2022年10月19日(水)
形 態: デジタルリリース
仕 様: iTunes Store, Spotify, AppleMusic など各ダウンロード・サブスク配信サ イトでリリース。ダウンロード価 格: 255円

インタビュー、コメントなど出演に関するお問合せは
■お問い合わせ 合同会社スケープジャパン スケープレック東京
担当:吉田
TEL:090-9631-6904
E-MAIL: info@scaperec.com


2022.10.22(Sat) ScapeRec,Tokyo 15th Anniversary and HOJO HISAYA BAND with Hisomi-TNP Tour2022 “Skip It” Final @下北沢ERA

出演 :
HOJO HISAYA BAND with Hisomi-TNP
Yun*chi (with HOJO HISAYA BAND)
City Your City
Genius P.J’s
カクマクシャカ(沖縄)
TEACHI(沖縄)
Froito


Liquid Lighting VJ
Kuriko Tsuchiya

Live Painting
菊地寅祐(東京藝術大学)
安原トモ(武蔵野美術大学)


前売り3000円(+1Drink料金)
当日3500円(+1Drink料金)
学割前売り2000円(+1Drink料金)
OPEN:16:30 / START : 17:00
CLOSE : 22:00

前売りチケットはイープラスにて 発売中。
https://eplus.jp/sf/ detail/3722740001-P0030001

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人生に振り回されだしたら、Doubtmenのライブへ逃げ込め!! Doubtmen feat.まおせり、ワンマン公演レポート!!!!

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Doubtmenとは、プロデューサー・作詞家・映像作家として活動中のK.INOJOと、キーボディスト・サウンドプロデューサー・アレンジャーの青木庸和の2人によるテクノユニット。今年他界した音楽評論家の大伴良則も期待を寄せていたユニットだ。10月5日、Doubtmenは目黒ライブステーションを舞台にワンマン公演「Live Doubtmen vol.1」を開催。オープニングアクトに、アリス十番が登場。この日は、仮面女子の森下舞桜と涼邑芹による実験的音楽ユニットの”まおせり”を迎え、Doubtmen feat.まおせりという形で演奏を行なった。
Doubtmen Doubtmenとは、プロデューサー・作詞家・映像作家として活動中のK.INOJOと、キーボディスト・サウンドプロデューサー・アレンジャーの青木庸和の2人によるテクノユニット。今年他界した音楽評論家の大伴良則も期待を寄せていたユニットだ。10月5日、Doubtmenは目黒ライブステーションを舞台にワンマン公演「Live Doubtmen vol.1」を開催。オープニングアクトに、アリス十番が登場。この日は、仮面女子の森下舞桜と涼邑芹による実験的音楽ユニットの”まおせり”を迎え、Doubtmen feat.まおせりという形で演奏を行なった。

オープニングを飾ったのが、歌謡メタル×ダンスロック・スタイルを軸に据えたアイドルグループ:仮面女子のアリス十番。彼女たちが場内を温めたうえで、ライブはDoubtmenへバトンを繫いだ。

Doubtmenのライブは、青木庸和によるエレピの演奏から幕を開けた。残響しながら浮遊する音色へK.INOJOがサンプラーを用い、音を重ねたす。学校のチャイムの音を合図に、ライブは様々な電子音をコラージュしながら、次第に音楽という形を成してゆく。あらかじめ構築した音の地図へ、2人が様々な音の色を塗り重ねる。テクノ/エレクトロ。確かに、そうだろう。むしろ、2人がいろんな隠し持った音を先出しジャンケンのように地図の上へ次々と広げながら、どんな音の景色が出来上がるかを楽しんでいるようだ。

Doubtmenの演奏へ導かれ、サイバーラビット・コスチュームに身を包んだ森下舞桜と涼邑芹が舞台へ姿を現した。2人は『いつまでもわたしとあなたはここにいる』を通し、韻を踏んだ文節を次々と並べ、人の本能を揶揄するように言葉を連ねだす。2人は口にしていた、「君はズルイね」と。でも、一番ズルイのはDoubtmenだ。まおせりを語り部に、舞台の上に広げた音の地図をフロア中にまで広げ、その地図の上に観客たちを招き入れた。いや、満員の観客たちまでも、2人の描く地図を彩る大切な文様へと変えていた。

森下舞桜と涼邑芹の口ずさむ「Tik-Tak」の言葉とリズムがシンクロ。メンバーらがクラップを求めるのに合わせ、クラップも同期しながらリズムは大きく躍動。楽曲が広大な景観を描くのに合わせ、Doubtmenはこの空間を現実から解き放ち、時間や意識を歪ませる幻想的な異世界へと塗り替える。森下舞桜と涼邑芹が呪文のように「Tik-Tak」と呟き、社会的概念や人の考え方を揶揄した皮肉満載のリリックを大きく手を振りながら投げかける。そのたびにフロア中の人たちも、4人のかけた魔法へ操られるように大きく手を振り、腰を揺らす四つ打ちのリズムに身を重ね合っていた。「Tik-Tak Tik-Tak」の言葉と躍動したエレクトロな音が、感覚を歪ませる。

心地好く気持ちや身体を弾ませる『ごめんね』は、Doubtmen流のパーティーチューン。スタイリッシュでアーバンなダンスミュージックの上で、まおせりの2人が浮遊感を持った声で、この空間をお洒落な都会の夜へと彩りだす。オートチューンを用いた2人の声が、いろんな「好き」をシニカルに表現した言葉の数々を、都会の街中へ電光のように降らしながら軽やかに舞い踊っていた。

それまで華やかに彩っていた空間へ闇を注ぎ込むように、Doubtmenは『タイヘンタイヘン』と歌いだす。現代社会に渦巻く、人として在るための正論と矛盾を、K.INOJOが韻を踏みながら…いや、しゃれた駄洒落に変え、薄汚れた現代社会へ、歌声の絵筆で強烈な風刺の詩を書き連ねていった。

まさに、今の気分は『ごめん、ちょっと何言ってるかわからない』だ。この曲でDoubtmenは、人が持つ本能を赤裸々にさらけ出す。フロア中に響く、恋愛や宗教などへ盲目的に溺れる世の女性たちが、本能のまま、感情的なままに剥きだした汚い本音の独り言の数々。優男になったK.INOJOは一人一人の言葉を受け止めたうえで、最後に「ごめん、ちょっと何言ってるかわからない」と言葉を返していた。心地好いダンス音楽に乗せ、Doubtmenは、人が心に抱えもつ汚らしい欲望をこの曲に映し出していた。中に出てきた、菅元総理や小池都知事が声だかに叫んだ緊急事態宣言の文言にさえ、K.INOJOは「ごめん、ちょっと何言ってるかわからない」と皮肉を述べていた。さすが、世間を嘗めたふりして、世の中が本当に必要な言葉を突き刺すDoubtmenらしいアジテートだ。

『キーラーゴの蜂蜜』からは、ふたたびまおせりが登場。Doubtmenは、可愛いアイドルたちのスウィートボイスをバカンスの風に変え、心地好く跳ねたエクレトロな南国ラテンのビートを通し、観客たちの身体を揺らしだす。まるで楽園を舞台にした快楽と恍惚の小説のような歌だ。でも、その中に隠した痛い刺激をチクッと刺してゆくのがDoubtmenらしいスタイル。今はただ、南国の歌姫たちの声に合わせ、頭を空にしながら心地好くステップを踏みながら浮かれればいい。その快楽の背景に何が潜んでいようとも…。浮かれ騒ぐのも、現実から逃避するのも、人が求める本能。「さぁ、踊ろう!!」。

これまで以上にきらびやかな音がフロア中を駆けめぐる。Doubtmenは『自業自得』を通し、この空間をグリッターな世界へ染め上げた。軽やかに舞い踊りながら、「自業自得じゃない?」と甘い言葉を突き刺す森下舞桜と涼邑芹。この日のように、可愛い女性たちにひょいひょい腰を振ることで、その先に何が起きるのか…。甘い欲望に手を伸ばした先に何が起きようと、それも欲に溺れた人の自業自得。人のせいにしてみずからを守る、人の腐った高慢ちきで自己欺瞞な連中たちの落ちた先の人生を、Doubtmenとまおせりは、「時効理想だよね」と皮肉っていた。それでも欲に溺れた人は、どぶ水を飲んでも反省をすることはない。そしてまた、ド壺(ツボ)に陥る。まさに「時効自得じゃない」か。

さらにビートとリズムは躍動する。森下舞桜と涼邑芹の煽りに合わせ、フロア中に生まれた熱いクラップ。Doubtmenは『そのボタンは押さない方がいい』を通し、簡単に誘惑のボタンを押すなとメッセージしてきた。でも、そのボタンを押す愚かさこそが、人間らしさ。躍動するきらびやかな音の装飾を通し、Doubtmenの2人は感覚を目くらます。その計画を遂行するように、まおせりが「ねぇ、ボタン押さないほうがいい」と歌いながらも、ここにいる人たちの心のボタンを本能のままに押させる。そんな確信犯たちが、そこにはいた。

判断は間違ってはいけない。その先に待っているのは、奈落か、快楽か。最後に、Doubtmenは『間違うな』を演奏。まおせりの2人が大きなフラッグを振りながら「なぜ君は楽しんでるの~わからない」と歌いだす。森下舞桜が、涼邑芹が、ここでもいろんな事例を並べながら「間違うな、後悔するに決まってる」と、欲望と本能に溺れる”君”に、警告してゆく。世の中を動かすいろんなお騒がせ人(政治家や芸能人ら)が、屁理屈めいた理論で武装しながら言葉の弾丸を次々と打ち放つ。その言葉の弾丸をハートに何発くらおうが、君はけっして間違うなとDoubtmenは伝えてきた。君に確かな信念があるなら、世の中を歪ませる言葉の弾丸を打つ連中の言葉などに惑わされるこくなく、自分の道を貫けばいい。そう、自分を間違うな。

アンコールの最初に持ってきたのが、人を構築する細胞(染色体)をタイトルに冠した『DNA』。意識を混濁する破壊衝動の高いエレクトロな音に乗せ、Doubtmenはふたたびまおせりをパートナーに、ハードボイルドなストーリーを描き出す。森下舞桜と涼邑芹が言葉を殴りあうように交わしながら、人の心に刻まれた本能を構築。「すべては決まっている 誰もそれには逆らえない それはD.N,A」と伝えていた。Doubtmenのライブは、1曲1曲触れるたびに自分の今の生き方を、人としてあるべき衿を正した生き方とは何かを考えさられる。でも、その時点で、Doubtmenの策略に落ちていたということだろうか…。

最後に、アリス十番をステージへ呼び込み、全員で『こんなはずじゃなかったのよ』を披露。この日のセットリストは、人の生きざまをいろんな角度から、皮肉を重ねるように進んでいた。最後もフロア中の人たちがメンバーらの動きに合わせ大きく手を振り、身体を揺らしていた。日々、生きていく中で、きっと誰もが「こんなはずじゃなかったのよ」と思うときがあるだろう。そこで落ち込むくらいならDoubtmenの音楽やライブに触れ、自分の心を解き放つ理想郷へ逃げ込めばいい。Doubtmenは、どんな心の色の人たちも受け入れてくれる。ただし、その人の人生のその後は…「こんなはずじゃなかったのよ」と漏らす汚い言葉の後始末は、自分で流してくれ。

Doubtmenとまおせりは、演奏を重ねるごとに、人の本能を次々と浮き彫りにしていった。そのたびに、人工着色料まみれの毒々しい自分の素顔とも向き合っている気分だった。そんなことを書いてるが、ライブ中は、Doubtmenが生み出すエレクトロなダンスミュージックに心地好く身を預け、風刺の効いたまおせりの言葉を耳にしながら、そんな糞みたいな連中にアディオスと手を振っていた。もしかしたら、自分が手を振られていたのかも知れないが…。よく「細かい理屈など気にせず楽しめ」と言うが、Doubtmenの音楽は「細かい理屈や屁理屈まで気にして楽しんでこそ」。心塞ぐ奴らは勝手に塞げばいい。何事も、そう。心を自由するスイッチを押すのは、自分次第。それを、この日のDoubtmenは、さりげなく囁いていた。

次回は、12月15日。舞台は、ふたたび目黒ライブステーションだ。詳細は…。

photo by T.ENAMI

TEXT:長澤智典

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