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タランティーノと音楽

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いらない前置き


いきなりこんなこと言われても困るかと思いますが、今現在、私は土下座しています。

なぜかと言えば少しだけお付き合い願いたいからです。

私、クエンティン・タランティーノ監督の大ファンでして、どれくらいファンかというと、監督が来日した際、なんの手がかりもないくせに、なぜか会えると思って六本木の街を一日中徘徊してたくらい大好きなんです。

(しかも新宿にいたらしいです…。)

六本木の街を徘徊したその翌日に、帰国するのを狙って空港に一日中待機してたくらい大好きです。

そんなことどうでも良いですよね。

でも、ほんと大好きなんです。

クエンティン・タランティーノも映画も。

△Chuck BerryのYou Never Can Tellで踊る名シーン


前置き


改めましてみなさん、こんにちは!!

突然ですが、映画はお好きですか?

私は好きです!

ジャンルはどんなものがお好きですか?

アクション、サスペンス、ファンタジー、SF、ホラーなどなど、その日の気分に合わせて鑑賞するのも楽しいですよね。

映画館でポップコーンをほおばりながら観るもよし、家で寝っ転がりながら観るもよし、自由な時間に好きな映画を観るっていうのは、なんだか分からないけれど、体の中の“なんらかのメモリ”がグングン上昇していくような感覚がありますよね。(ありますよね?)

△映画館で観る映画は最高です


映画と音楽


それでですね、私が映画を楽しむ上でとっても重要なのが音楽(サウンドトラック)だと思っているんです。

先に挙げた、どのジャンルの映画にも欠かさず音楽は流れますよね。

映画にとっての音楽とは、私たち人間にとっての空気のように当たり前に存在しています。でもそれって一歩間違えたら、とんでもないことになりかねないと思いませんか?

例えばホラー映画の“怖い演出のシーン”で、コミカルな音楽が流れてしまうとその怖さが減ってしまいます。

逆に“母と子の涙の再会シーン”でおどろおどろしい音楽が流れたら素直に感動出来ないどころか、「何かあるのかも…」と身構えてしまいませんか?

そして、シーンに対して適した音楽を流すのも大事ですが、その音楽をどのタイミングで流し、どのタイミングで止めるのかも監督やスタッフの手腕が問われるところです。

アクション映画において、「さぁ、これから反撃開始だ!」というシーンで迫力のあるロックが流れたら鳥肌が立ちます。

けれど、反撃が終わった後に迫力のあるロックが流れても観てる側からするとキョトンとしてしまいますよね。

このように、映画にとって当たり前の存在である音楽は、一歩間違えれば監督の意図しない捉え方をされてしまったり、その映画自体の評価さえ下げてしまうかもしれない非常にデリケートなものなんです。

しかしですね、映画を製作するにあたって、そんなデリケートな音楽を、自分の好きな楽曲だけを使って、好きなタイミングで流したり止めたりと、自由自在に操る監督がいるんです。

それが、クエンティン・タランティーノ監督です。

△鬼才クエンティン・タランティーノ監督


タランティーノと音楽


クエンティン・タランティーノ監督(以下タランティーノ)は、日本でも人気の高い監督で『パルプ・フィクション(’94)』や『キル・ビル(’03)』など、名作を創り続けているアメリカの監督。作品自体は観たことなくてもタイトルは知っている、または監督の名前は知っているという方も多いと思います。

そんなタランティーノは、本来デリケートでまるでダイナマイトの運搬のように扱わないととんでもないことになってしまう音楽を、ある意味乱暴に、そして好き放題に使ってしまうのです。(かっこいい!)

『パルプ・フィクション』と「Misirlou(ミザルー)」

△多くの”都市伝説”を生み出した名シーン


タランティーノの代表作『パルプ・フィクション』では、オープニングにDick Daleの「Misirlou(ミザルー)」を使用しています。

(このMisirlouは、1920年代のギリシャの伝統的な民謡を1962年にDick Daleが演奏スピードを上げ、サーフ・ロックバージョンにするというアレンジを加え大人気となった曲です。

「Misirlou / Greek」で検索するとMisirlouの元ネタとなったギリシャ民謡が聴けますのでぜひ視聴してみて下さい。感動しますよ!)

このMisirlou、『パルプ・フィクション』のオープニングで画面下部からニョキニョキと生えてくるタイトルロゴと共に威風堂々と流れ、タランティーノ自身も「オープニング・クレジットにMisirlouを掛けると、とにかく強烈なんだ。」と公言するほど“とにかく強烈”なんです。

△画面下部からにょきにょき出てくる名OPシーン



『パルプ・フィクション』の他にも、リュック・ベッソン監督の『TAXI(’98)』でPatrick Abrialが演奏するバージョンで使われたり、2006年にはThe Black Eyed Peasが自身の楽曲Pump itにてサンプリングで使用し、長年に渡り幾度となく人気を博しているのがMisirlouです。


話を戻します。

そんなMisirlouが『パルプ・フィクション』のオープニングで華々しく流れ、出演者のクレジットが表示されてからしばらくすると、曲の途中で突然ラジオのチューニングの音が聞こえ、曲がKOOL & THE GANGの「Jungle Boogie」に変わるんです。

しかもですよ、そのJungle Boogieも曲の頭から流れるのではなく、中途半端な位置から流れ出します。

もちろんこれは『パルプ・フィクション』で、主役の2人が乗っている車のラジオを聴いているという演出なので、音楽が切り替わること、そして曲が途中から始まるということに不思議はないのですが、それにしても乱暴です。(かっこいい!)

△ハンバーガーについて語り合う名シーン


他にもタランティーノが音楽を自由に扱っているシーンは山ほどあります。

『ジャンゴ 繋がれざる者』と「レクイエム」

タランティーノの西部劇映画『ジャンゴ 繋がれざる者(’12)』では、クー・クラックス・クランの集団が馬に乗って登場するシーンで、ジュゼッペ・ヴェルディ作曲のカトリックのミサ曲であるレクイエム「Dies irae(怒りの日)」が流れるんです。

△迫力無限大の集団乗馬シーン


そのシーンと、このレクイエムは非常にマッチしていて、その相乗効果のお陰で騎乗しているクー・クラックス・クランの集団に観ている私たちが圧倒されるんです。

ただ、ここでもそのレクイエムは43秒間だけ流れ、フェードアウトもなしに突然中途半端な場所で切れます。

この43秒が長いのか短いのかはさておき、突然プツリと終わるのでタランティーノ映画に慣れていないと違和感があるかもしれません。

実に乱暴です。(かっこいい!!)

そしてこのレクイエム、ご存知の方も多いかと思われますが、深作欣二監督の『バトル・ロワイアル(’00)』のメインテーマにもなっていて、一方でタランティーノは自身が選出する「1992年から2009年の映画・ベスト20」の第1位に『バトル・ロワイアル』を挙げています。

△タランティーノも敬愛する深作欣二監督のバトル・ロワイアル


もうお分かりだと思いますが、そうなんです。タランティーノは自分の好きな映画(作品)の好きな曲だからという理由だったり、単純にただ好きな曲だからという理由で、自身の監督する映画にもそのまま使い、しかも頭から流すわけでもなく、最後まで流すわけでもなく、好きなところから流し始め、好きなところで切っちゃうんです。しかもブラックミュージックからミサ曲、さらには演歌までとジャンルも問わずです。ね、乱暴でしょう?(かっこいい!!!)

他にもまだまだあるんです。

『パルプ・フィクション』でも『キル・ビル』でも、その他のタランティーノが監督する9作品全部において、音楽がとんでもない使い方をされていて、しかもそれが最高にかっこいいんです!

今回は、「タランティーノと音楽」と題して、大まかな話になり、多くは紹介出来ませんが、いずれタランティーノ監督作品、そして音楽の使い方のひとつひとつを丁寧に掘り下げた記事や、タランティーノ作品以外にも音楽がイカス映画の紹介などが書けたらなぁと思っています。

ご拝読ありがとうございました。

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