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「アイヌの魅力を伝えたい」クラウドファンディングから誕生したゲストハウス

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北海道沙流郡平取町(さるぐんびらとりちょう)の二風谷(にぶたに)という地区に「ヤント」というゲストハウスがある。

二風谷は、帯広から40kmほど東に行った場所に位置する、人口約400人の自然に囲まれた地区。

人口の半数以上をアイヌ民族が占めており、今なおアイヌ文化が色濃く残っている。


「アイヌ」とは?

アイヌとは「人間」という意味の言葉で、森羅万象全てに「カムイ(神)」が宿るという信仰を持ち、独自の言語や文化を持つ民族。

明治時代には、近代日本の同化政策によってアイヌ民族は独自の言語や文化を禁じられ迫害されていたが、現在では「アイヌ新法」の成立により、「先住民族」と認められている。

彼らの多くは北海道に多く居住しており、とりわけ二風谷は北海道の中でもアイヌ民族が占める人口が最も多い地区である。


「アイヌ文化の魅力を多くの人に伝えたい」

自らもアイヌ民族であり、生涯をかけてアイヌ文化の研究・伝承に尽力した萱野(かやの)茂氏の孫である公裕(きみひろ)氏は、「アイヌ文化の魅力を多くの人に伝えたい」という思いから、2018年4月に「ゲストハウス二風谷 ヤント」をオープンさせた。「ヤント(Yanto)」とはアイヌ語で「宿」の意味。

ゲストハウスのオープンに先駆け、オーナーである萱野公裕氏がクラウドファンディングで資金を募ると、掲載開始からわずか3日間で目標金額の38万円を達成。さらに掲載は延長され、最終的には84人もの支援者から総額90万円を超える支援金が寄せられた。

支援の輪によって集められた資金が、アイヌ関連の書籍や映像資料、上映設備の購入に投じられたことで、宿泊客や地域住民のための「学びと交流の場」づくりが実現した。

ヤントのある二風谷には、国土交通省の水質調査で1位に選出された沙流川(さるがわ)本流の中流部に位置する「二風谷ダム」、平取町が運営する「二風谷アイヌ文化博物館」の他に、オートキャンプ場やバンガロー、スケートリンクなどを備えた娯楽施設「二風谷ファミリーランド」、その敷地内に位置する、宿泊も可能な天然温泉施設「びらとり温泉 ゆから」などがある。

ヤントは「萱野茂 二風谷アイヌ資料館」の敷地内にあり、この資料館にはアイヌ民具やアイヌの伝統的な住居である「チセ」などの野外展示品を含む1000点以上が常設展示されている。また、ゲストハウスの開業以降は度々、アイヌ関連の映画の上映や、アイヌの伝統楽器の奏者や伝統歌を歌うアーティストのライブなどが開催されている。


アイヌの音楽を伝えるアーティストたち

OKI DUB AINU BAND(オキ・ダヴ・アイヌ・バンド)

アイヌの血を引く、伝統弦楽器「トンコリ」奏者のOKIが率いるアイヌ・ルーツ・バンド。本来はアコースティックであるトンコリを電子化し、ベースとドラム、さらに「リムセ」と呼ばれるアイヌの踊りを加えた独自のスタイル確立。レゲエやロック、アフロ・グルーヴなど幅広いジャンルを取り入れた型にとらわれないサウンドで人気を博し、アジアやヨーロッパ、アメリカでツアーを開催、国内でも数多くのフェスに出演している。

OKI DUB AINU BAND / SUMA MUKAR

MAREWREW(マレウレウ)

アイヌの伝統歌「ウポポ」の再生と伝承をテーマに活動する女性ボーカルグループ。プロデューサーであるOKIが率いるDUB AINU BANDとともに、ワールドミュージックの祭典「WOMAD(ウォーマッド)」への出演を果たすなど国内外で活躍している。

マレウレウ1stフルアルバム「もっといて、ひっそりね。」告知SPOT

近年ではアイヌ文化を描いた漫画、『ゴールデンカムイ』(野田サトル 著)の発行部数がシリーズ累計1000万部を突破し、二度に渡るアニメ化(第三期製作決定)、さらには第22回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」を受賞したことなどをきっかけに、アイヌ文化への関心が高まっている。


ゲストハウス二風谷 ヤント 公式


OKI DUB AINU BAND / MAREWREW 公式

http://www.tonkori.com/profile/index.php

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