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バンドとライブハウスの関係性

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ただのバンドマンが、音楽を専門に扱う事業に携わりはじめたことで、物事への考え方が少しずつ変化してきました。今回は最近SNSやネット上で見かけたライブハウスがバンドにかける「ノルマ」のお話。

筆者は売れないバンドマン歴がそれなりに長く、ライブハウスがバンドにかけるノルマはもはや昔からの友達のようによく知っているのですが、知らない、よくわからない方に簡単に説明します。

有名バンド・アーティストでもない限り、チケットが完売しライブハウス、出演者共に利益が得られることは難しいですよね?

バンドやアーティストはともかく、ライブハウスの収益はチケット売り上げとドリンクの売り上げにほぼ依存します。

そもそも、テナント料や電気代、機材やメンテナンス、スタッフの人件費など経費がかかり、「お客さんが入りませんでした」に対して「はいそうですか。」では経営の存続ができません。

そこで、ライブハウスは出演者に対し、最低限運営にかかる金額は担保してほしいという意図から「◯◯円のチケットを◯◯枚売ってね」と売り上げノルマをかけるのです。

もちろんその売り上げ以上を出した出演者にはチャージバックというシステムがあり、ノルマである枚数以上の売り上げに対しては50〜100%の金額が支払われます。

さて、そんな「ノルマ」に対して、色々な議論がされています。悪徳ライブハウスやイベンターの法外なノルマのお話は置いておくとして、「ノルマを達成できないバンドはライブをするな」「ノルマをかけるライブハウスのせいで才能が育たない」「海外ではアーティストにギャラを払うのが当たり前」などなど、熱い、時には炎上レベルにまで発展する議論がされているのを見かけます。

ですが、どちらかが悪いと議論する前に、この「ノルマ」に対しての本質はどこにあるのか、どこに着地することがライブハウスと出演者のWin-Winに至るのかを見定めることにこそ大切なのではないかと思います。

立場が違えば見方も変わるとはこのことで、もちろん単純に出演者がしっかりと集客をし、ライブハウスはチケット代やドリンクの売り上げで利益を出し、ライブが盛り上がり物販が売れるというのが一つの理想です。

しかし、ノルマ云々で論争が起きる今、理想論だけでは何も変わりません。

そんな中、ちらほらとノルマに対しての提案や新たなサービスを見かけるようになりました。一つピックアップしてご紹介いたします。

ニューヨークで2014年にローンチされた「JUKELY」というサブスクリプションサービスです。


このサービスは小規模な音楽会場や大スターではないミュージシャンの中から選んで契約し、ユーザは月に25ドルを払うとその都市で行われるそれらのコンサートにいくつでも行ける。Jukelyだけでなくコンサートの主催者も、空席がうまることによる売上が得られる。一方、無名のバンドやミュージシャンの中に明日のスターや掘り出し物を探すタイプの音楽ファンは、安い料金でたくさんのコンサートを聴ける。

Jukelyには、音楽で出会いを作るという側面もある。このプラットホーム上でユーザは、自分と同じ音楽趣味の人たちに出会ったり、またシステムの個人化機能により、自分の好きなタイプの音だけどまだ知らなかった、という新人のコンサートを知って行けたりする。

引用:https://jp.techcrunch.com/2015/02/07/20150206jukely-launches-in-san-francisco/


もちろんこのサービスを日本で開始したからといってノルマ問題が全て解決するわけではありませんし、そもそも定額制のライブ行き放題サービスはすでに日本にもあります。

しかしながら、いまだに語られるノルマ問題。

ただ一つ言えることは、ライブハウスとアーティストが共に繁栄していける、サスティナブルな未来の糸口は、双方の歩み寄りや上記のような新たなサービスによってもたらされるのではないでしょうか。

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