<はじめに>
こんにちは!ギタリストの西山昌一郎です。
最近では一般的になってきた、エレキギターの自宅録音について、私なりの考え方を記していきます。
これはYouTubeなど動画サービスの「弾いてみた」から、私が普段行っている仕事としてのギター録音にまで通ずるものです。
最近、自宅で録音することが私は主になりつつあります。基本的に私が自宅で行うのはエレキギターのライン録音です。
アンプシミュレーターやDAWプラグインの発達で、セッティングさえ追い込めば、専門のエンジニアさんがしっかりとマイキングしてくれたレベルに近いサウンドが自宅でも出せる時代になりました。
もちろん、レコーディングスタジオに出向き、完璧な環境下で、楽曲の完成形をよく理解した専門のエンジニアさんに狙ってもらった音の方が素晴らしいと感じることが圧倒的に多いのですが、私は作家さんやアレンジャーさんに自宅に来ていただいたり、事前に自分自身が完成形の打ち合わせをしっかりとすることで、求めているフレーズの擦り合わせや、音色については少々サウンドレンジを広く取り、引き算の作業でエンジニアさんがミックスをやり易くなるように心がけています。「在る帯域」はEQなどで削れますが、「無い帯域」を足すというのは非常に難しい作業だからです。
ギターをただ言われた通りに弾くだけではなく、こうやって音楽制作に関わる皆様と一緒に目指す音を作り上げてゆくこと、そこにいかにして「自分印」のギターを刻み込むかが、自身の音楽的成長にもつながると思っています。
<レベリング>
PC、オーディオインターフェースなどを揃え、エレキギターの音が録音できる段階になりました。
いざハードのエフェクターや、アンプシミュレーターソフトでライン録音する時、一つの疑問が生じます。
「皆どのくらいの音量で録音しているのか?」
・音量レベルに関して
音色によりますが、ピーク-8~-5db位がこれまでの経験則で良かった印象です。相当の大ボリュームです。もちろん、クリップ(過大入力)させてはいけないのでそこはご注意を。
大きな波形で録音したものは、ギターが拾うハムノイズも小さくするからです。
考え方はシンプルで、例えばピーク-10dbで録音したとして、その波形を-5dbまで引き上げると、録音されたノイズのボリュームも上がります。
ピーク-3dbで録音してそれを-5dbまで落とせばノイズの音量も一緒に落ちるので、この原則に従って大きめに音量を決めます。
・録音時の音質(サンプリング)
これは高音質であればあるほど良いとされますが、マシンの負荷限界や、単純に、ハードのデジタルマルチエフェクターなどは出力音質に限界があります。
私は自身のマシンスペックや受け渡しを考え、96kHz/32bit floatでの録音が多いです。
アレンジャーさんやエンジニアさんから、受け渡しビットレートの指定をもらうことがほとんどなので、書き出し時に音質を指定サンプリングサイズに変更すれば良いからです。
ハイレゾであればあるほど、音の情報量は多いですが、低音質で録音したものをそれ以上にオーバーサンプリングしても情報量は増えないからです。
環境によりオーバーサンプリングで微妙な変化を生じる場合があるらしいのですが、特に私の環境下でのエレキギター録音に関してはオーバーサンプリングで音質が改善したと思うことは一度もなかったです。
それよりも、もともと情報量の多い音で録ってしまいましょう。
・書き出し時の音量の注意点
録音はつつがなく進行し、無事終わりました。あとはこれらのギタートラックを書き出してエンジニアさんに渡したり、自分でミックスを行ったりするわけですが、この際ギターの各トラックの音量、バスアウトの音量、マスター音量すべてを0dbにします。
録音時に何本もギターを重ねると、リスニングし易いようにトラック毎に音量を操作していると思います。これを一旦、初期状態に戻します。
こうすれば録ったままの音量・音質に限りなく近い状態でデータを書き出すことができます。
先に記したように、エンジニアさんは基本的に引き算の要領、つまりボリュームを下げたり、帯域を削る方法でミックスを行う方が多いからです。
また、DAWもフェーダーの変化とともに音質も変化します。これを防ぐ目的もあります。
さらに、たくさんのギタートラックをデータでやり取りする際、ストレージを使いますが、その際のファイル圧縮でも音質が微細な変化を起こすそうです。こちらは知り合いのアレンジャーさん、エンジニアさんが実際に波形検証して発覚したことなのだそうです(ストレージでのやりとりは私も頻繁に使いますし、その音質の違いは自分の耳では多分わかりませんが・・)。
このように「レベリング編」について簡潔に挙げただけでも、たくさんのこだわりがあります。
この記事で読者皆様の楽しいギターライフのお手伝いが出来ますように。